京友禅の染め屋さん「禾口木丙(のぎぐちきへい)」が企画製造する友禅マフラーです。企画から製造まで自社と関係職人さんで行い、高級ウール(日本製メリノウール)100%と素材と染めにこだわっています。
マフラーのことを日本語で「襟巻き(えりまき)」と言います。古い文献では1461年に一休和尚が詠んだ歌に襟巻と言う記述があることから、この時代から日本にあった防寒具の一つです。
マフラーには保温、防寒、防風の役目がありますが、襟元をおしゃれに着飾るオシャレアイテムでもあります。
マフラーの素材には、カシミヤ、ウール、ニットがあります。
カシミヤは高い機能性を持っていますが、一頭の山羊から約100gしか採れない希少素材であるため、価格が高くなる傾向があります。
一方、植物繊維であるコットンや化学繊維であるアクリルなどを使ったニットであれば、価格も安く日常使いには適しているかもしれません。
しかし、防寒用具としてのマフラーがその機能を十分果たすためには、やはりウールが最も適していると思われます。高い防寒機能を発揮することができる素材は、今のところウール一択であると言っても過言ではありません。
ウールは熱伝導率が低い素材として知られており、冬暖かく夏涼しく使えるのはこのためです。また、ウール自体に吸湿性があるため、マフラーの内側のムレを防ぎ不快感を軽減できるといった機能があるのも特徴です。
本商品は、高い品質を誇り高級羊毛として知られるオーストラリア産のメリノウールを使っています。繊維が細いため、高い保温性、吸湿性、汗冷えしにくいという性能があります。
日本製の安心感にもこだわっており、山形県で紡ぎ、浜松・尾州で織り、そして京都で染めた国内製造の高級ウールマフラーです。
マフラーには大判、小判などサイズがあります。
大判マフラー | 長さ約180cm前後 | 幅約50cm前後 | たっぷりとしたボリューム感を出せる大きめのサイズ |
---|---|---|---|
中判マフラー | 長さ約160cm前後 | 幅約35cm前後 | 色々なコーディネートに対応できる一般的なサイズ |
小判マフラー | 長さ約140cm前後 | 幅約30cm前後 | 小柄な方や子供に合うシンプルなサイズ |
ショートマフラー | 長さ約100cm前後 | 幅約30cm前後 | コンパクトに使える持ち運びに便利なサイズ |
京友禅の染め屋さんが企画し製造するマフラーです。京手描友禅の伝統である和柄を中心としたデザインを基本とし、配色や大きさを工夫し、日本人や外国人に受け入れられるような作品作りに邁進しています。
日本の伝統工芸である友禅には、基本的にウールを染めるといった概念はありません。作り手の挑戦は、友禅が過去に染めたことがないウールという難しい素材を使い、試行錯誤の結果生み出された貴重な染色技術の結晶です。
友禅染めのことを略して友禅と呼びます。絹や木綿を生地として豊富な色彩を用いて鮮やかに染め出した模様には、風景、草木、花鳥や器物などが描かれており、これを友禅模様と称します。なかでも、京友禅は写実的な柄づけが金糸、金箔をあしらってなされる美の頂点とされます。
友禅には、京友禅(京都)、加賀友禅(金沢)、そして江戸友禅(東京)の3つがあり、これらを日本三大友禅と言っています。
友禅染は、基本的に着物や帯を染めるための伝統的な技法のひとつで、生地の上に様々な色彩を使って絵を描き、美しい染色によって完成させていく日本独自の染色の方法です。京都で生まれた友禅染めは、まず加賀に伝わり、その後江戸に伝わりました。
加賀友禅(金沢)は、加賀五彩と言われる臙脂(えんじ)、藍、黄土、草、古代紫の五色を基調とした濃淡のある色合いを使い、加賀友禅作家によって独自に表現された武家風の文様が大きな特徴となっています。
江戸友禅(東京)は、藍や白を効果的に用いたもので、余白部分の多いすっきりとしたデザインです。磯の松、釣り船、網干し、千鳥、葦などの江戸近郊の風景をモチーフとした、町人文化を思わせる文様が特徴となっています。
京友禅(京都)は、花鳥風月や有識文様などの雅やかな柄づけに加え、金箔、絞りや金糸による刺繍などの染色以外でも高い技法が施され、宮中や公家風の伝統的で華やかな表現が大きな特徴です。
このように、同じ友禅でもそれぞれに異った魅力を持っているのが面白いところです。
京友禅には15工程、15人の職人が必要とも言われています。以下は京友禅の染屋「禾口木丙」の山形さんが教えてくれた工程です(一例です)。
下絵(したえ) | 柄を描く、絵付け |
---|---|
糊置き(のりおき) | 糊を入れた筒から先金で柄のふちに糊を置き、色を入れる際にはみ出さないようにする。糸目の糊。 |
地入れ(じいれ) | 糊を生地に定着させる |
挿し友禅(さしゆうぜん) | 柄の中に赤や青などの色を筆や刷毛で入れる |
蒸し(むし) | 大きな蒸し釜で蒸して色を止める。生地と生地が触れないように吊って、90℃くらいの温度で90分くらいかけて、色を定着させる |
伏せ(ふせ) | 糊を柄の上にのせる。糊が乾いて割れてしまうと、そこから色が入ってしまうため、どんな組成の糊を使って色を留めるかが糊屋さん、伏せの職人さんの腕の見せどころ |
伸子張り、引染め(ひきぞめ) | 乾いた後に、約13m、長い場合には16mの工場の中で生地を引き、ぴんと伸ばして縮まないようにする。伸子と呼ばれる竹製の串をいくつも使い、たるまないように生地を張る(伸子張り)。その上に大きな刷毛で染料を生地に引いていく |
蒸し(むし) | ふたたび蒸しに入れ、色を定着させる |
水元(みずもと) | 糸目の糊も伏せの糊もいっしょに水で流して落とす。この段階で、地色も柄も染まっていることになり、ここまでで初期の友禅の工程が終わる。そして、ここから装飾が始まる |
金彩(きんさい) | 染め上げられた生地に、箔をちりばめる |
刺繍(ししゅう)、地直し、仕上げ | 金糸や銀糸、絹糸などを使って刺繍を施す。ここで用いられる京繍(きょうぬい)と呼ばれる繊細で優雅な手刺繍は、平安時代から続く技法 |
糊置き、地入れ、染めや止め、どの工程も微妙な加減が求められる作業で、職人の腕の見せどころ。鮮やかな色の発色具合や美しい柄が生み出せるかどうかは、職人の絶妙な感覚が左右します。
このように、京友禅にはたくさんの工程があり、それぞれに職人さんがいます。1工程ごとに1〜3日かかり、例えば15日かけたら15〜40万、生地代や卸を経て京友禅は100万円単位になります。そのような高価なものは現代には特別なシーンでなければなかなかニーズのあるものではありません。
今は時代に合わせて効率化が計られ、伝統技術と最新技術を融合させた友禅染めが主流となり、コストダウンも進みました。また、中国での生産や国内での型友禅、捺染友禅が増え、比較的安価な着物が手に入るようになりました。そうすると、だんだん京都の職人さん、後継者も減っています。
一方で、15ある工程のうちの1工程でも職人さんがいなくなれば京友禅は作れなくなります。「それは一番避けがたいこと」と山形さんは言います。時代は変われど、形で変われど、京都の歴史が培った技術はこれからも受け継がれ、美しい色彩を生み出しつづけるべき存在であることに違いありません。
こんな状況を憂い、京友禅の技術を残そうと、染め屋の山形さんは新しいアイディアにチャレンジしていくことになります。
※京都で染め屋と言うと、絹やちりめんなどの生産地から生地を買ってきて、自分の思うデザインを職人さんたちに作ってもらうまとめ役のことを呼びます(染めだけを専門とする職人さんも染め屋と呼びます)。
筆をデジタルのペンに持ち替え、捺染友禅(染料を糊にまぜて布などに直接すり付けて染める技法)とデジタル友禅を融合して、京友禅のマフラーが生み出されました。
禾口木丙の山形さんはこう言います。
——はじめはデジタル友禅などの新しい技術に抵抗がありました。でも結局、職人さんたちがどんどんいなくなってしまって。
昔ながらのやり方、昔のやり方に忠実に従うことが、この時代の京友禅の衰退の一因なら、京友禅を残すために、新しい方法を模索することも必要だという考えに至りました。
今は、捺染友禅、デジタル友禅を取り入れています。デジタルとはいえ、手描き友禅に負けないように全部手(デジタルペン)で書く、糸目一つずつ手で書く。コンピューターは幾何学模様が得意ですが、和柄の美しさは手書きでこそ出せるものだと思います。
また、地入れ、蒸しは職人さんなしではできません。蒸し終わるまで色がどう仕上がるかは分かりませんから、そこにも職人さんの高度な感覚が必要です。染めは機械がやってくれますが、そこにも結局は技術が必要になります。
京友禅の和柄の魅力を伝えたい。日本人の方が見ても外国人の方が見てもすごい綺麗と言われるような京友禅を残していきたい。私は染屋として、京友禅の全工程の職人さんと関わりながら仕事をしてきましたが、そんな立場だからこそ、京友禅の魅力を新しい表現で伝えていきたいと考えています。
京友禅の魂は和柄の美しさ。京都の職人の技術を守りながら、変化していく新しい時代に適応していくのが、染屋「禾口木丙」です。